会長コラム「水曜のつぶやき」第5回

 ~薬剤師の小さな推理~

私の身長が170cmを超えたのは、高校生のころでした。

その頃の私は、
「将来ひとりでも生きていけるようにしておいた方がいいかもしれない」
などと、わりと真剣に考えていました。

それなら資格を持てる仕事に就こう。
そう思って選んだのが薬学部でした。

私が高校を卒業する頃は、
ちょうど院外処方が広がり始めた時代でした。
進路相談の先生も薬学部をよく勧めていました。

私は多治見の北の方にある高校に通っていましたが、
理系の同級生には薬学部に進んだ人も多く、
今も薬剤師として働いている人がたくさんいます。

実際に薬剤師になってみて感じたのは、
この仕事は「推理の仕事」だということです。

処方箋を見ながら、
先生はどういう意図でこの薬を出したのだろうかと考える。

患者さんの症状を聞いて、
もしかすると薬の副作用ではないだろうかと考える。

患者さんから
「前にもらった薬が残っとるんやけど、飲んでもええやろか?」
と相談されれば、

それはいつ処方された薬なのか。
どんな症状のときの薬なのか。
今飲んでいる薬との飲み合わせは大丈夫か。
使用期限は過ぎていないか。

いろいろな情報をつなぎ合わせながら、
頭の中で小さな推理をしていきます。

そして、推理して終わりではなく、
それをひとつひとつ確認していく。
この作業こそが、薬剤師の仕事なのだと思います。

薬学部は今では6年制となり、
覚えることも、実習の内容も増えました。

また現場でも、複雑な診療報酬の仕組みや
ジェネリック医薬品の登場によって
把握すべきことが増え、
昔に比べて仕事は比べものにならないほど複雑になりました。

それでも、市民の皆さんから
「ありがとう」と声をかけていただくたびに、
薬剤師になってよかったと思います。

今日も薬局では、
薬剤師が頭をフル回転させながら
小さな推理を続けています。