会長コラム「水曜のつぶやき」第24回

 ~いろは坂29~

夏休み、夫と栃木県の日光に行ってきました。

その日は、台風の影響で、日光も降水確率80%の予報。

それでも、なんとか大きく降られることなく、日光東照宮や華厳の滝などの
観光を終えることができました。

そして翌日。

岐阜へ帰るため、いろは坂を下っていました。

いろは坂には、48個のカーブそれぞれに、「い・ろ・は・に・ほ・へ・と……」の
文字と数字が書かれた標識があります。

それが面白くて、私はずっとカーブごとに数えてきました。

いー1
ろー2
はー3



おー27
くー28
やー29

私たちの車の前には、一台のバイク。

道は濡れていて、落ち葉もあります。

「こんな道、バイクで走るの怖いよね」

「もし、前のバイクが転んだらどうする?」

なんて夫と話していました。

脳内では、すでに救急救命のシミュレーションができていた夫婦。

まさか、その直後に本番がやってくるとは思ってもいませんでした。

「いろは坂29」で、前方のバイクが転倒したのです!

「え?!」

夫と顔を見合わせ、

行くっきゃない! 出動だ!

と、車を止めて駆け寄ります。

バイクの免許を持っている夫は、すぐに倒れたバイクを起こして路肩へ。

私たちの車も寄せて、後続車を通します。

私は携帯電話を持って、男性に声をかけました。

どうやら右肩を負傷し、腕が上がらない様子です。

119番に電話しました。

「63歳男性、バイクで転倒。右肩が上がらないようです。
意識ははっきりしていて、お話しできます。いろは坂29です!」

……実際には、かなりたどたどしく、オロオロしていたと思います。

でも、坂の番号をずっと数えていた私は、

「29」

だけは、はっきり言えました。

無事に救急車へ引き継ぎ、その場を離れました。

そして帰り道。

少し落ち着いたところで、ふと思いました。

「そういえば、ドラレコに全部映ってるんじゃない?」

慌てて録画を確認します。

……何も映っていません。

どうやら衝撃を感知してから録画を始めるタイプだったようです。

東京MERならぬ、土岐MER。

肝心のカメラは回っておらず、その一部始終は、私たちの中だけの
日光の思い出となりました。